こんにちは!クリスク・マレーシアのヌルルです。
「インフルエンサー」という単語がアメリカの有名な英語辞書「ウェブスター辞典」に正式登録されたのが2019年。日本でも2017年、三省堂「今年の新語」で「インフルエンサー」が2位にランクインしました。
そして今、多くの企業が活用しているインフルエンサー・マーケティングですが、その歴史は、いわゆる有名人・著名人以外の一般人が、世界に向けて「自分」を発信できるブログの流行から始まります。
2000年代前半に世界中でブログが流行し、その後2010年にInstagramがリリースされてからは、より多くの「一般人」が企業のPRやブランディングにおいて影響力を持つようになってきました。
近年では、InstagramやTikTokでの投稿がバズって一気にインフルエンサーとなった人も多いですが、ブログからフォロワーをしっかりと付けている実力派インフルエンサーもマレーシアやシンガポールでは一定数います。
今回はそんなブログから有名になったマレーシアのインフルエンサー、ChanWon(チャン・ウォン)さんにインフルエンサーの本音を伺ってきました!
ChanWonさんに聞く!影響力絶大なインフルエンサーの本音とは?
ChanWonさん
Instagram:約10.4万人
YouTube: 約4000人(2022年12月時点)
2009年 ブログスタート
2010年 Instagramスタート
2013年 YouTubeスタート
2017年 Influencer Asia 2017年ビューティー部門で受賞(マレーシア人唯一の受賞者)
2018年 以降、アジアに限らず国際的なブランドとコラボレーションしたPRで活躍中
インフルエンサー・フォロワー・クライアント三方よしのプロモーションとは
——ChanWonさんは今までさまざまなブランドや企業とコラボレーションしてきましたが、やってみて一番面白かった案件を教えてください。
私は旅行とビューティーをメインにしているので、この2つに関する案件は毎回楽しいです。でも強いて挙げるなら、観光系の案件で、愛媛県に招待いただいたファム・トリップ(モニターツアー)がとても面白かったです。
このツアーでは農家さんに滞在して、朝食はホストマザーが手作りしてくれました。私のフォロワーには何度も日本に行っている人が多いので、一般的な観光ではないコンテンツを求めています。私も楽しかったし、フォロワーからのフィードバックも良かったです。
もう1つはビューティー系のワークショップです。私は多くのブランドと長年タイアップしているので、長期のプロモーションプランをブランド側と一緒に立てやすいんです。
私がどのようにメイクをしているか、ヘアスタイルはどうしているか、さらに、写真の撮り方などをフォロワーの皆さんに共有するビューティー・ワークショップを不定期で行なっているのですが、その際にタイアップしているブランドの商品を紹介しています。
フォロワーの皆さんも喜んでくれるし、ブランド側も嬉しいし、私も嬉しい、win-win-winなプロモーションはやっていてとても楽しいです。
——なるほど、win-win-winのプロモーションは最も理想的な形ですね!日本の企業案件はChanWonさんだけでなく、ChanWonさんのフォロワーも喜んでくれるマーケティングがしっかりできていると思いますか?
コスメに関して言うならば、そもそも日本の商品はマレーシア人の肌色にとても合っています。市場調査がちゃんとできているので、マレーシアに進出している商品はどれを紹介しても、私のフォロワーからは「買ってみたい」、「私も使ってみたい」という反応をいただきます。
投稿に関しても、日本のブランドからは「ハッシュタグでブランド名を入れてください」とだけリクエストをいただくことが多いので、やりやすいです。事前に商品を勉強して、こんな情報を投稿すればフォロワーの皆さんに役立つかなと準備をし、投稿前にブランド側に内容の確認をしてもらっています。
投稿内容まで細かく指示があると、フォロワーの期待とは違う情報発信になってしまったり、他のインフルエンサーとまったく同じ投稿内容になってしまったりと、SNS上に同じ広告だけが出回っている状態になってしまいます。
せっかくインフルエンサーを起用しているなら、現地のトレンドやフォロワーの期待をよくわかっているインフルエンサーに投稿内容を任せて、それぞれにユニークな発信をしてもらうのが一番良い形だと思います。今のところ私のもとに依頼のくる日系のブランドはそれをわかってくれていますね!
——それを聞いて安心しました。
成功のコツはカスタマー目線と長期的戦略
——では観光系の案件はどうでしょうか?ChanWonさんは日本だけでなく他の国の政府観光局などからも依頼を受けていますが、他国と日本との違いはありますか?
オーストラリアや韓国の政府観光局、スイスの公共交通機関とコラボレーションをしたことがありますが、彼らは行程を組む段階から私の意見を聞いてくれます。
一方、日本の自治体案件ではすでに行程が決まっていることが多いので、そこが大きな違いですね。他国の案件は、クライアントや代理店とオンラインでミーティングをして、2週間くらいかけてじっくりと一緒に行程を組むことが多いです。
プロモーションをする側にとっては「ここはPRしたい!」という場所でも、実際私のフォロワーはじめ一般の外国人旅行者には行きにくい場所だったり、私が「良いところでした!」と投稿をしても真似できない行き先だったりしたら、投稿する意味がないんです。
ですので、観光系の投稿は事前に行程が決まっていたとしても、真似をしやすい、外国人にとって行きやすい行程であることがとても大事です。
——ChanWonさんは毎回、カスタマージャーニーを考慮して案件を受けているのですね。これまで受けた案件の中で、最も成功したと感じるコラボレーション案件を教えていただけますか。
毎年旧正月の時期に、燕の巣を販売しているクライアントのギフトボックスをプロモーションしており、今年で5年目になります。
私専用のプロモーションコードが与えられて、私の投稿を見た方は特別価格で商品を購入することができるのですが、1年目は120個の販売数、5年目の今年は450個のセットを販売することができたんです!
長年プロモーションをしているので、「去年気になったけど買わなかった」というフォロワーの方も「今年は買ってみた」ですとか、「今年結婚するから来年は義理の家族にプレゼントで購入したい」というように、フォロワーそれぞれのタイミングで購入するきっかけを作ることが可能になっています。
また、クライアント側も私が撮影した写真をうまく利用してデジタル広告を回しています。私のSNSページとクライアントのページ、そして広告の3本柱で、多くの人に情報を届けることができています。
成功したなと感じる案件はどれも長期的なタイアップをしているブランド、企業、地域が多いですね!効果的なPRをするなら1人のインフルエンサーと最短でも3〜6ヶ月は契約するべきだと思います。
——代理店としてもできるだけ単発の依頼は避けるべきということですね。とても勉強になります。
インフルエンサーのメリットは現地フォロワーに身近な感覚で発信できること
——ChanWonさんはEコマースでのプロモーションも行っていますよね?
はい、アジアを中心に展開する「Shopee」に出品しているクライアントの販売促進を、何度も行っています。
Shopee上でもクーポン制があるので、私独自のクーポンコードをクライアントに発行していただいて、フォロワーが購入しやすいような体制をとっています。ディスカウントが難しい場合は、無料でプレゼントがもらえるキャンペーンを行ったこともあります。
Eコマースは、プラットフォーム上だけでは商品の良さをアピールすることが難しい場合も多くあります。そのため、特にマレーシアに初進出をする商品は、インフルエンサーを起用して商品の良さや活用方法をマレーシア人に知ってもらう必要があると思います。
テストマーケティング的にインフルエンサーを起用するのもおすすめです。
例えばインスタントラーメンを売りたいという企業は、インフルエンサーにマレーシア人が食べやすそうなアレンジレシピを考案してもらい、SNS上での反応が良かったものは在庫を多く用意しておくなどの対策を取ることができます。
Eコマースとインフルエンサーマーケティングって、相性が良いんですよね。
——今後はどのような案件、商品をPRしたいと考えていますか?
もっと家庭用品や家族向けのコンテンツを発信していきたいと考えています。
私のフォロワーには、ブログしかやっていなかった頃から長くフォローしてくれている方が多くいます。そして私が歳を重ねるのと同じく、フォロワーもライフスタイルが変わってきています。
以前は派手なメイクや都会への旅行を好んでいた人も、今では家族を持ち、母になり、ほしい物や求めている情報に変化があるのです。
実際に、私の家を改築した投稿には大きな反応がありました。
今後は家電や旅行に関しても、カップルや子ども連れで回れる場所などを投稿できれば良いなと思っています。
ちなみに「訪日旅行の投稿はいつになる?」と私の訪日旅行の様子を待ち侘びているフォロワーがたくさんいるんです。私は47都道府県制覇を目標にしているので、訪日案件ももっとやっていきたいです!
インフルエンサーへの報酬は……?
——最後に、少し聞きにくい内容ですが、インフルエンサーを起用した案件は、ズバリいくらくらいの報酬なのでしょうか?
インタビューで初めて報酬について聞かれました(笑)。
そうですね、私は料金表があるので、基本的にはその価格に沿ったものでお願いしています。
ただ、長年ご一緒している企業は予算を提示してきて、「この予算内なら何投稿できるか」というように費用から相談する場合もあります。セレブリティーやテレビタレントと違ってインフルエンサーは融通がきくので、まずは相談してもらうのがいいと思います。
——ありがとうございます!最後にこれを読んでくださっている日本の企業、自治体の皆さんに一言お願いします!
日本大好きです!!
マレーシアの一般消費者は、PRとわかる投稿に関してエンゲージメントが低くなる傾向があります。
それを避けるために、自然な感じでインフルエンサーが自分で良いと思ったものを発信していると思わせる投稿にする必要があり、起用するインフルエンサーの選定がとても大事になってきます。
インフルエンサーによって投稿スタイルもイメージも違うので、マレーシア人にどのように知ってもらいたい・買ってもらいたい・来てもらいたいかを明確にし、インフルエンサーと話し合って、お互いにとって一番理想的なPRをしていければ、より多くの人に届く情報発信ができるのではないかと思います。
まとめ
筆者も学ぶことが多くあった今回のインタビュー。
情報を求めている人のもとへしっかりと届くインフルエンサー・マーケティングは、市場を良く知り、問い合わせがあったときだけでなく、日頃から多くのインフルエンサーの投稿を見てきている現地スタッフなくしては成り立ちません。
クリスクでは最新トレンドのアップデートやインフルエンサーとのコミュニケーションを大切にしています。東南アジアでのインフルエンサーマーケティングをお考えの際は、お気軽にお問い合わせください!
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(執筆:Nurul Asyikin 編集:クリスク海外事業部)