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漫画愛ゆえの出版社への抗議 そして翻訳者へ - クリスク

こんにちは、ベトナムスタッフのリエンです。

ずっと漫画家になりたいと思っていた私にとって、漫画の好きなコマをじっくりと眺めて、それを自分で描いてみるのは一番のストレス解消になる趣味です。


自作のイラスト。途中で描く気がなくなって未完成の状態。

しかし、私はその夢を諦めて漫画の翻訳者になることになりました。

きっかけは、ある日Facebookの投稿で、小さい頃から一番好きな作品のベトナム語翻訳の質が悪いという事を知り、ファンとしても日本語を学んだ者としても本気で怒りを感じたことです。

翻訳すれば少なからず原作とズレが生じるものです。しかしこれほどミスだらけの翻訳版が出版されるなら、原作と翻訳版の読み手に、同じ内容が伝わらないのではないかと感じました。

翻訳作品の成功には、翻訳者はどれだけ原作の魅力を保つことができるか、翻訳文が自然な文章に仕上げられているか、この2つの両立が重要でしょう。

その後、その漫画家のベトナムファンクラブのメンバーとして、翻訳ミスを纏めて出版社に連絡したりした結果、自分がその漫画の校正者として依頼を受けることになりました。願ってもないチャンスを得た瞬間でした。

その漫画シリーズが終わり、今度は自分がほかの作品を翻訳することになりました。自分の興味のあることを仕事にしながら、外国語能力を伸ばすことができるなんて今も信じられないです。人生って驚きに満ちていますよね。

(ジャンプコミックス 出版 冨樫義博 著 HUNTERXHUNTER 第1巻 ベトナム語翻訳版)
翻訳を担当した日本の漫画には翻訳者としてリエンの名前が記載されている。「尊敬している漫画家の作品を翻訳したのは夢のようで信じられなかった」そう。

『どの漫画が人気? 電子書籍は? ベトナムでの日本漫画の普及と現状 』で紹介したように、ベトナムでは違法サイトや海賊版サイトで漫画を読んでしまう人が多いです。でも、「そっちの方が翻訳が良いんだよ!」という発言をする読者がいたらとっても悔しいです。

正式版が最も良い翻訳であり、「正式版を読んで初めてこの作品の魅力が実感できるんだ」と言われるくらい、漫画の素敵なところを120%伝えられる、素晴らしい翻訳版を出版して欲しいですよね。
そして、読者をがっかりさせないために、自分自身も英語・日本語だけじゃなく、色々な翻訳版を参考できるように他の外国語能力を鍛えていきたいと思います。

おわりに

漫画がない世界で住んでいたら、私の人生はどう変わるだろうと何度も想像してみました。やはり漫画が好きにならなかったら、日本文化や日本語に興味を持ち、いまクリスクで漫画関係の仕事をしていることはないでしょう。

今は、これからもっともっとベトナムの漫画市場が活発化していくように願っています。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

ちょっとだけ、おまけ

クリスク海外事業部のしらにたです。今回のリエンの話、いかがでしたか?
実は、自分には小学生の娘がいるのでリエンの話に感慨深いものがありました。

5歳の夏にベトナム人のリエンが読んだ日本の漫画が日本人の自分とを20数年後につなぎ、一緒に仕事をしていると思うと本当に不思議です。

私事ですが、2018年2月にタイに出張したときにタイ人漫画家のウィスット・ポンニミットさん※ に似顔絵を書いて頂く機会がありました。自宅に飾ってあるこの似顔絵を見た娘が、いつか漫画やアート、東南アジアの人たちと何かのつながりを育んでくれたら嬉しいです。

「実物より絵のほうが恰好良いね」って、娘はいつも言ってますが(笑)


左:クリスクしらにた。右・ウィスット・ポンニミットさん

※ウィスット・ポンニミットさん(https://www.facebook.com/wisutofficial
タイや日本で活躍するアーティスト・漫画家。漫画「マムアン」シリーズ(小学館)やロックバンド・くるりのPVを手掛けるなど幅広く活躍中

(編集:きたざわあいこ)