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どの漫画が人気? 電子書籍は? ベトナムでの日本漫画の普及と現状

世界で日本のマンガが人気、と言いますが、ベトナムでは一体どのように日本のマンガが知られているのでしょうか?また世界で広がる電子書籍の普及や、海賊版の問題など、ベトナム現地スタッフがリポート!

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こんにちは。クリスク・ベトナムのリエンです。

突然ですが、ベトナムの若者の外見的な特徴はなんだと思いますか?

私も最近気づいたのですが、それは、メガネをかける人が非常に多いということです。小学生の中にも、強度の近眼の子供をよく見かけるようになりました。
近視が増加傾向にあるのは、テレビやインターネットが普及した時代での避けられないデメリットかもしれません。

しかし今から15年くらい前は、学生たちの目が悪くなるのは「漫画を読みすぎること」だとよく言われていました。
今回は、それが正確かどうかということではなく、漫画はベトナムの若者文化において現在どのような位置を占めているか、漫画を読む習慣がベトナムでどの程度定着しているかについてご紹介したいと思います。

 

ベトナムにおける漫画観

ベトナムでは、漫画といえば日本の漫画を思い浮かべる人が多いです。
しかし、ベトナムにおける漫画(ベトナム語:Truyen Tranh)は、一般な人々の解釈では「絵入りの物語」であり、子供向けの読み物として扱われており、内容的にも教育的・道徳的価値観が少ないという考えから、ベトナム社会ではあまり高く評価されていないのが実情です。

さらに、性や暴力の描写があることに理解がないベトナム人には、「漫画はベトナムの子供にネガティブな影響を与える」という印象があります。しかし、日本の漫画はベトナムの若者文化に深い影響を与えていることは否定し難いのも、また事実です。

1992年にキム・ドン出版社が「ドラえもん」を発刊したのが、ベトナムで紹介された最初の日本マンガとなりました。そして日本より薄く編集されたドラえもんの単行本は現在218巻発売されています。
これがきっかけで、ベトナムにおける漫画愛好家の第一世代が誕生したと言われています。

その後生まれた、今の10代、20代のベトナムの若者たちは日本の漫画に囲まれて育ったといっても過言ではありません。言い換えれば、この時代がベトナム漫画市場の発展の礎になったと言えるでしょう。
出版された作品は、ドラえもんやちびまる子ちゃんなどの子供漫画に限らず、ドラゴンボールのような少年ジャンプの大ヒット作がベトナムでも大変人気でした。

1990年代のベトナムでは、漫画はほぼ海賊版の形で流行していましたが、2004年以降は劇的な変化が起きました。
2004年にベトナムはベルヌ条約に参加し、その結果、正規品の日本の漫画が初めて売られるように。これによって、ベトナム人の漫画ファンの読む習慣と意識が変わってきました。

 

漫画出版状況

現在のベトナムの漫画市場は、日本が80%、韓国が15%、中国が5%ほどですが、韓国の比率は上昇傾向です。原因としては、テレビドラマの影響を受けて、韓国の恋愛漫画の人気が上がっているからです。

漫画は国営出版社のキム・ドン社の出版物のうち35%~40%を占めていますが、実際に大ヒットしていると言えるのは、ドラえもん、名探偵コナンなどあまり多くはありません。

なお、ベストセラーの場合は1巻につき10万部が販売されますが、一般の漫画は2,000〜5,000部程度の販売が主流です。また、ベトナムでは日本の出版社が求める品質レベルを満たすために、子供や中学生に対して安くない値段で売られています。
ベトナムの文化には「お小遣い」がない一方、20歳未満の漫画ファンが大部分を占めていることは見逃せない点です。
なお、漫画1冊はせいぜい120円ぐらいですが、週3冊購入することができない学生は少なくないです。そのため、貸本屋で借りて読んでいる人の方が実際に漫画を買う人よりも多いと考えられます。

ベトナムの漫画第一世代も成人すると、生活の中心であった漫画への興味が薄れていきます。
また、文化の違いが壁になり、大人向けのタイトルを増やしにくい、売れる作品が限られるなどの課題があるため、おもしろいものが少なくなってきたような印象があります。

 

インターネットの普及がもたらす漫画への影響

インターネットが急速に広がる中で、インターネット上にはベトナムの漫画ファンが集まるフォーラムがいくつも立ち上がっています。その場では、出版されにくい漫画の海賊版をオンラインで共有するといった事が、よく行われているようです。
また、日本語・英語版を無料で翻訳するチームもたくさんあり、ベトナム語を入れたものをファンの間で公開することも珍しくありません。

これにより、ファンサイトを経由して海賊版の漫画を無料で読む人が増加傾向に。結果、漫画の貸本屋に足を運ぶ学生がここ数年少なくなっており、各出版社の売り上げや利益に大きな影響を与えている状態です。
キム・ドン社によると、漫画事業から撤退する出版社も後を絶たないそう。

そこでキム・ドン出版社は、2014年6月に携帯端末で利用可能な国際基準の電子書籍ライブラリーをベトナムで初めて開設しました。

これはつい最近の話であり、電子書籍がベトナム人にとって新しい形の読書文化に加わったと言えるでしょう。
しかし、「触れられる本物を手に入れたい」という強い所有欲求を持つベトナム人の間では、インターネットから漫画を購入することに慣れるにはやはり時間がかかると考えられます。
日本やタイで流行している携帯端末用の漫画が、ベトナムで同様の成功を得ることは現時点で難しいのではないでしょうか。

 

まとめ

経済の発展・インターネットの普及は、ベトナムの漫画市場と漫画文化に多少の影響を与えてきました。しかし、今後発展していくかどうかは、どのようなチャレンジをするかによるでしょう。

次回の記事では、ベトナムでの漫画市場が発展する見込みと今後の展望をご紹介したいと思います。

 

(編集 : きたざわあいこ)

※本文内で引用されている資料・データ、登場する人物の所属名・役職名などは掲載当時のものです。

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この記事を書いたのは

クリスク・ベトナム マネージャー
東京大学留学後、ベトナム大手IT企業で仕様書の翻訳や通訳を担当。クリスク・ベトナムで広告運用・インフルエンサーマーケティング・マーケットリサーチなどのデジタルマーケティング支援に携わるほか、ベトナム大手出版社でマンガ、小説のベトナム語翻訳も手掛ける。趣味は映画鑑賞、コンサート鑑賞、山登り。

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