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漫画雑誌の初発刊からクラウドファンディングでの発売まで12年! ベトナム漫画市場の今

2002年まで、ほとんど国内で作られた漫画がなかったというベトナム。そこからインターネットの普及と共に人気が出てきたベトナム漫画市場で出てきている、クラウドファンディングの事例や海賊版の問題などを紹介します。

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こんにちは。ベトナムスタッフのリエンです。
前回の記事「どの漫画が人気? 電子書籍は? ベトナムでの日本漫画の普及と現状」でベトナムの漫画市場をご紹介しました。
今回は、引き続きベトナムにおける日本漫画の状況と、ベトナムでの漫画の発展傾向について紹介していきます。

漫画文化の浸透と共に、本物に近づく日本漫画

ベトナムでは、1997 年から一般の人でもインターネットが使用できるようになり、2013年には普及率は35%に上がりました。そして、日本の漫画もインターネットの普及と共に急速に普及します。このタイミングで、ベトナム人の漫画を読む習慣が完全に変わったと考えられています。

最近、日本の漫画文化についてベトナム人がさらに深く理解できるように、ベトナムの出版社は原作と似た形で漫画の単行本を発売しました。それ以前の表紙は、厚紙にイラストを印刷しただけのものでしたが、現在はコーティングのほか折り込み部分もついており、日本で売られている単行本とそっくりになりました。

そして、以前と比べて一番変化したのが、綴じる向きです。
日本の漫画では縦書きのため右綴じになっているのが普通ですが、ベトナムのような横書きの国では左綴じになっていました。そのため、日本の漫画は左右が逆になるように反転して印刷するのが普通だったのです。
しかし、そうすると登場人物はみんな左利きになるし、服などに書いている文字もすべて反転してしまいます。そのような問題を解決するために日本の漫画に限って原作と同じ右綴じで印刷するようになりました。

 

漫画への熱が引き起こす光と闇

ソーシャルメディアを通して漫画愛好者のコミュニティが多く生み出されました。漫画を早く読みたい人は大勢いるため、ファンの間で海賊版がよく共有されています。また、人気の高い作品の英語版と日本語版が、ファンによってベトナム語に翻訳されることも珍しくありません。

こういった背景もあり、熱心なファンが翻訳ミスを発見し、出版社に通知することで校正版が発行され、結果的に翻訳の質が改善されるといったケースも実際にありました。

例:キム・ドン社から、翻訳改善についてのお知らせ
https://www.facebook.com/nxbkimdong/photos/a.10151338973348869.1073741827.99839463868/10153740446283869/?type=3&theater

 

ベトナム漫画の新しいかたちと未来

漫画は、趣味や大学の進路、職業観などにも大きな影響を与え、生き方の指南になることさえあります。
1990年代のベトナム人によって作られた漫画は数も少なく、内容も主に歴史的なものや、説教的な色合いの強い物語が過半数を占めました。しかし日本漫画の輸入がはじまったことが、ベトナム人漫画家を増やすきっかけとなりました。

最初は好きな登場人物のイラストを描いていた人が、徐々に自分で漫画を描きはじめるようになり、徐々に漫画家のコミュニティができてきたのです。

ここからは、ベトナム漫画の過去と今がわかる3つの作品をご紹介いたします。
最初は、子供向けの漫画です。

「Than dong Dat Viet」

ベトナム漫画②_1
(引用元:http://www.phanthi.vn/2/san-pham/Than-Dong-Dat-Viet.html

2002年、Phan Thi社が「Than dong Dat Viet(ベトナム神童)」というタイトルの連載漫画が、ベトナム漫画に大きな変化をもたらす事となりました。
ベトナムで発売される漫画のほとんどは外国製であったため、常に単行本のかたちで出版されていました。しかし、この漫画が成功したことで、はじめてベトナムでも漫画雑誌が刊行されることになったのです。

この漫画は、ベトナム各地の文化や習慣、祭礼などが盛り込まれているほか、国民的英雄が悪とみなされるものと戦うというストーリーも多くの若い読者を魅了し、ロングセラー漫画となりました。

次は読者と専門家により高い評価されている歴史漫画です。

 

「龍神将」

 


2004年、「Long Than Tuong(龍神将)」という歴史コミックはTre出版社の雑誌に連載されるようになりました。しかし、その漫画雑誌は突然出版停止になり、この作品の連載も途中で終了に。
しかし、多くのファンがこの作品の続きと単行本を望んだため、2014年に作者であるPhong(フォン)とDuong(ズオン)の二人が、ベトナム漫画初のクラウドファンディング(少額投資)による資金調達で、単行本を自費出版しました。
結果、この作品は ベトナム漫画に特有のスタイルを確立する事に成功しました。
なお、この漫画は日本の外務省が主催する「第9回国際漫画賞(International Manga Award)」で優秀賞を受賞しています。

 

最後に紹介したいのは、日本漫画から大きな影響を受けていると考えられる作品です。

「三世」

ベトナム漫画②_2

(引用元:http://comicola.com/chuong/tam-the-chuong-1/
※作者からの引用許可取得済み

まるで日本の漫画のように見えませんか?
この作品では、コマ割や擬音、登場人物たちの描き方のスタイルが、日本の漫画ととてもよく似ていますが、これは「Made in Vietnam」です。
日本の漫画スタイルが、ベトナムの若手の漫画家たちにとても大きな影響を与えていることがよく分かりますね。

 

まとめ

日本が作り上げてきた漫画を出発点として、ベトナム漫画が生まれてきました。しかしベトナム漫画産業は日本ほど大きくないため、おそらくベトナムで漫画を出版するまでのプロセスは、同人誌と同じというのがほとんどでしょう。
現在のベトナム漫画制作環境は、ベトナムの漫画家たちにとって冬の時代であるという人もいます。

昨今のベトナム漫画は、10年前と比較すれば品質が大幅に改善さており、私自身、驚いているし嬉しく思います。しかしベトナムの漫画文化がこれからさらに進化していくためには、出版社の投資及びファンの支援が不可欠だと考えられます。

 

(編集 : きたざわあいこ)

※本文内で引用されている資料・データ、登場する人物の所属名・役職名などは掲載当時のものです。

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この記事を書いたのは

クリスク・ベトナム マネージャー
東京大学留学後、ベトナム大手IT企業で仕様書の翻訳や通訳を担当。クリスク・ベトナムで広告運用・インフルエンサーマーケティング・マーケットリサーチなどのデジタルマーケティング支援に携わるほか、ベトナム大手出版社でマンガ、小説のベトナム語翻訳も手掛ける。趣味は映画鑑賞、コンサート鑑賞、山登り。

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