皆さんApa khabar (アパ・カバー:お元気ですか)?
クリスク・マレーシアのヌルルです。
日本では、日本語だけを使って生活する方が多いと思います。そのため、国内向けに広告を打とうと思ったときに、「何語にしようかな」などと考えることはないでしょう。
しかし、1つの国の中で何ヵ国語も使われている場合は、いちいち何語にすべきかを考える必要があります。筆者が住むマレーシアもその例に当てはまります。
では、複数の言葉を使う国では、何語で広告を出すのが効果的なのでしょうか?
結論から言うと、マレーシアでは「ターゲットにあった言語を使用する」が良いと考えます。
当たり前じゃん!と思われるかも知れませんが、「ターゲットにあった言語を選ぶ」ためのヒントと、実際に出稿する際に気をつけたい点を、マレーシアを例に解説します。
多民族国家であるマレーシアでは、主に以下の4言語が使われています。
友人間や職場で主に使われているのは、英語とマレー語です。
では、マレーシアの広告はこの2ヵ国語で良いのでしょうか?
答えはNOです。
それはなぜなのか、まずはマレーシアの現状からご紹介します。
マレーシアはマレー語を公用語としています。これは、民族構成が複雑なマレーシアでマレー系民族が多数(69.8%)を占めていることも関係しています。
公立の学校ではマレー語で授業が行われています。
中国系やインド系の公立学校でも国語としてマレー語を学ぶため、基本的なマレー語は理解できます。一方で中国語は話せるが、書けないという中華系マレーシア人のような例も少なくありません。
マレーシアでは1967年まで英語が公用語でした。今でも算数と理科を英語で教える公立小学校が存在するため、幼少の頃から何かと英語に触れる機会があります。
そして、日本と異なり自国語で書かれた本や文献が少ないマレーシアでは、専門分野のリサーチや勉強をしようとすると、英語で書かれた世界中の論文や資料を当たる必要があります。
そのためか、マレーシア人の英語力は高いです。2021年のマレーシアのEnglish Proficiency Index(英語能力指数)は世界112ヵ国中28位、東南アジアではシンガポールとフィリピンに次ぐ3位です(日本は世界78位)。
なお、マレーシアはイギリスの旧植民地につき、イギリス英語が使われています。日本で一般的なアメリカ英語とはつづりも異なるため、広告や配布物では気を付けましょう!
例:
(アメリカ英語)Color
(イギリス英語)Colour
マレーシアで約22%を占める中華系民族の間では、中国語が使われています。「中国語」と言えど、実態は北京語、広東語、福建語などが入り混じっています。これは多民族国家マレーシアならではかもしれません。
また、タミル語は主にインド系民族の間で使われています。
中華系民族・インド系民族をはじめとした少数派の民族は、公の場で英語やマレー語を使っていても、同じ民族の間ではそれぞれの言葉を使っていることも多いです。
と、ここまで説明してきましたが、
「ターゲットに対して言語を選ぶのではなくて、ひとつの広告で全ての言語をミックスしたらいいのではないか?」と考える方がいるかもしれません。
しかしこれ、マレーシアでは法律に抵触する可能性があるんです。
マレーシアでは翻訳以外「ひとつの広告に2つ以上の言語を用いてはならない」という法律があります。日常会話ではマレー語と英語、中国語とマレー語など、2つ以上の言語をミックスすることも多い多民族国家マレーシアでも、広告での2ヵ国語ミックスはNGです!
なお、クアラルンプール市内の屋外広告ではマレー語のみ許可されています。他の言語を利用した場合はマレー語翻訳を必ず併記しなくてはなりません。
一方で、デジタル広告に関しては屋外広告ほどルールが厳しくないため、中国語だけが使われた美容商品の広告もよく目にします。
その他、医療系の広告については、「マレー語か英語以外の言語で書かれたもの(中国語、タミル語、インドネシア語、アラビア語、日本語、韓国語など)は、必ずマレー語もしくは英語の翻訳を伴わなくてはならない」という法律も存在します。
ここまで解説してきたように、
マレーシアでは多くの人が「マレー語」と「英語」に親しみがあるが、中華系では北京語、インド系では「タミル語」が日常的に使われています。
そのため、それぞれの民族をターゲットにするならば、以下の言語を選ぶことになるでしょう。
その上で、実際の広告や案件ごとに細かく提案させていただくことになります。
大前提として、広告や発信の際に英語以外の言語を選んでしまうと、そうでない民族にはスルーされてしまいます。
例えば、スカーフやコスメ商品を販売しているマレー系アパレルブランド「Duck」では、全ての投稿や広告が英語ですが、マレー系(ムスリム)だけではなく、中華系のフォロワーもしっかりと付いています。
また、中華系インフルエンサー「Jenn Chia」も、英語をメイン言語としているため、中国系だけでなく、マレー系やインド系からのコメントも多くみられます。
一方、中国語の広告や投稿に対しては、ほぼ100%のマレー系が関心を示しません。また、マレー語の発信ではマレー系以外が「自分向けではない」と感じてしまいます。
筆者のように中国語を理解していないマレーシア人は、たとえ民族を超えた超人気インフルエンサーであっても、「私向けの商品PRではないんだろうな」と思い中国語の投稿をスルーしてしまいます。
少し前までは、「購買力のある層=中華系」という認識が強かったためか、「購買力のある中華系をターゲットにしたい」というご相談をよくいただいていました。
しかし近年は国民の大多数を占めるマレー系の収入も上がってきており、中国語の広告では多くの人を取りこぼすことになります。
この場合は、英語で広告を出した方がより多くのマレーシア人にリーチでき、より大きな効果を期待できます。
日本ほど1つの民族や言語が圧倒的多数を占める国は多くありません。つまり海外で広告を出す時は、ターゲットやプラットフォーム、さらには法律も考慮した上で「言語」を選定する必要があります。
クリスクは今までの経験や知見、現地のメディアやインフルエンサーとの情報交換をもとに、みなさんにとって最適な言語を使ったデジタルマーケティングをご提案します。
マレーシアでの広告をお考えの際は、ぜひお気軽にクリスクへお問い合わせください!
参考)Advertising of Medicines and Medicinal Products to General Public – 項目3.5-a
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(執筆:Nurul Asyikin 編集:クリスク海外事業部)