こんにちは! クリスク・ベトナムのリエンです。
みなさんはストリーミングサービスを使っていますか?
Netflix、Spotifyのような有料サービスがベトナム市場に進出する際、「海賊版が溢れているベトナムでは成功しない」と予想されていました。
では、実際はどうだったのでしょうか?
オーストラリアのコンサルティング会社であるThe Point Consulting Groupの2019年の調査によると、音楽ストリーミング利用者のうち有料で利用する人は世界では約45%いる一方、ベトナムでは10%未満なのだそうです。
音楽だけではない海賊版問題
ベトナムのインターネット利用者のほとんどが海賊版の本や映画、音楽、漫画、ソフトウェアなどを違法ダウンロードしたことがあるはずです。
BSA(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)のよれば、海賊版ゲームの収益はベトナムのゲーム市場全体の30%を占めており、ベトナム企業6,278社を対象した2019年の調査結果によると、著作権を持つソフトウェアへの変換率がわずか22%(1,358社)だったとのことです。
Nielsenの市場調査によると、音楽ストリーミングの利用ユーザー層は21〜34歳の若い世代が34%を占めています。そのうち76%は収入レベルが高く、生活をより良くするために買い物をする傾向があるそうです。
しかし、このユーザー層のほとんどは音楽ではなく、旅行やファッション、スマホやインターネット通信費用などにお金を費やしているのです。
なぜ海賊版拡大に歯止めが効かないのか
海賊版コンテンツが拡大し続ける原因は色々ありますが、主な2つの原因はユーザーの意識と収入ではないかと考えられます。
まず「意識」ですが、これは海賊版コンテンツを無料で入手・利用できることに慣れてしまい、「無料」が当然だという認識をしている人が多く、著作権に対する理解などもまだ低いことが挙げられます。
もう一つの原因である「収入」については、ベトナム人の平均収入はまだ世界の中でも低く、ベトナム市場で提供している有料サービスの使用金額が他の地域と比べて低くかったとしても、ベトナム人にとってはかなり高い金額であることです。
変わるベトナムの法律と犯罪認定
このような状況を受け、知的財産権の保護を強化するために、ベトナムは2005年から知的財産権関連の法律が作られました。また複数の国際知的財産条約にも参加しています。
そしてついに2018年1月1日以降、著作権侵害が刑事犯罪となりました。現在、著作権の最高の罰金は5億ドン(約225万円)となり、厳罰化が行なわれたのです。
また、2019年9月には、ベトナムの企業が運営していた大手の海賊版漫画アプリ「Manga Rock」が閉鎖され、漫画愛好者のコミュニティで話題になりました。
さらに2020年6月には、ベトナムで最大の映画の海賊版サイトと他の多くの海賊版映画サイトもベトナム国内で完全にブロックされ、アクセスできなくなりました。
このように、少しずつですが海賊版への国の対応や、海賊版を利用して利益を得ようとしていた人への対応が変わってきています。
そして、若者の著作権への認識も変わってきており、多くのFacebookグループでは、引用元なしや無許可のコンテンツは受け入れられず、正規品への応援の声がよく見かけられるようになりました。
ベトナムの音楽ストリーミング状況
ベトナムのインターネット使用者のうちスマートフォン所有率は93%。一日あたりのストリーミング利用時間は約1時間11分と、ベトナムのストリーミング市場には成長の余地があると言えるでしょう。
ベトナムで人気のSpotify
音楽ストリーミングサービス世界最大手のSpotifyは、2018年3月にベトナムで音楽ストリーミング配信を正式に開始しました。
ベトナムでは若者の間での普及率が高く、2020年にベトナムで最も人気アプリのトップ5に選ばれました。
- 創業国:デンマーク
- ベトナムに進出年:2018年
- 無料使用:あり
- Premiumサービス試用:1ヶ月
- ベトナムでの料金:月額5万9000ドン(約300円)
Spotifyの魅力的な点は、約7000万曲の圧倒的な楽曲数と歌詞表示機能、ユーザーの履歴からパーソナライズする機能で、視聴者の好みに応えようとしていることです。そして、Apple Musicと違い、独自の「フリーミアム(無料視聴)」制度があることです。
有料のプレミアムプラン利用料は、月額5万9000ドン(約300円)と他の国に比べると安いですが、ベトナム国内の音楽配信会社のZingやNCTの月額3万VND(約142円)に比べるとまだ上回っています。
そのため、ほとんどの使用者は「広告なし」と「コンテンツをダウンロードできる」という機能を使わず、無料で利用している人が多いです。
ベトナムの動画ストリーミングサービス
ベトナムは、2016年からアナログ放送からデジタル放送に切り替わり、現在は合計40~60チャンネル(地域により)が無料で放送されています。
それ以外にも、ドラマ・番組・そしてスポーツなどを扱う有料チャンネルのサービスもあります。
その一方、スマートフォン、スマートテレビの普及やオンラインの動画サービスなどの登場により、若者のテレビ視聴率は低下傾向にあります。
ベトナム有料テレビ協会(PayTV)は、2018年にユーザー総数が110万人だったオンデマンドテレビサービスが2019年には270万人に達するなど急速に拡大していると伝えています。
ベトナムで人気のNetflix
ベトナム国内にはFPT Play、Zing、Galaxy Playといった人気配信サービスがありますが、アメリカで創業した動画配信サービスのNetflixも人気があります。
- 創業国: アメリカ
- ベトナムに進出年:2016年
- ベトナムユーザー数:約30万
- サービス試用:不可
- 料金:月額18万〜26万ドン(約900円〜1300円)※プランによる
Netflixは、日本では2015年、ベトナムでは2016年よりサービスが開始されました。現在、ベトナムで約30万の登録者を獲得し、Netflixの映画相談・レビュー・紹介などの投稿でSNSは盛り上がっています。
料金は、プランにより月額18万〜26万ドン(約900円〜1300円)。他のベトナムで人気な動画配信サービスよりも高いです。
しかし、ひとつのアカウントでも最大5つの端末で利用出来るため、アカウントをシェアする行動が一般的になりました。ただ、これは合法なのか、違法ではないかとネットコミュニティでは熱い議論も行われています。
Netflixへは不満の声も
Netflixは、値段が高いのにベトナム語翻訳版にイマイチなところが多く、海賊版のクオリティーの方が高くなってしまっているという不満の意見も珍しくありません。
また、ベトナム人の興味を引くベトナム国産映画やドラマ、中国ドラマなどのアジア系コンテンツもまだ少ない状況です。
支払い方法についても、Galaxy Play、FPT Playといったベトナムの配信サービスはクレジットカード支払いに不慣れなベトナム人に向けてアプリ支払いのサービスを提供していますが、Netflixではこのようなプログラムをまだ行っていないことも不満の声が見られます。
まとめ
ベトナムでは、これまでの海賊版文化や低収入といった問題はまだ解決できてはいません。
しかし、インターネット上での動画視聴率が上がり、もともとあった有料配信サービスはこれからインターネット動画配信サービスに変化していくでしょう。
ベトナムの高いインターネット使用率、スマートデバイス所有率、そして平均年齢の若さは、今後のベトナムでの有料配信サービスが発展する高い可能性を秘めていると言えるでしょう。
(編集:きたざわあいこ)