こんにちは!クリスク・ベトナムのリエンです。
ベトナムはYouTubeの動画視聴時間で世界トップ10に入っています。このようにYouTubeは大勢のベトナム人にとって日常に不可欠な存在になっていますが、その反面、様々な問題も発生しています。
今回はベトナムのYouTubeの利用状況とその問題点、またその対応策について紹介します。
ベトナムのYouTube利用状況
まず、現在のベトナムにおける、SNS・YouTubeの利用状況をご紹介します。
- 平均インターネット利用時間:1日6.5時間
- 平均ソーシャルメディア利用時間:2.22時間(SNSアクセス率:世界21位)
- ベトナムインターネットユーザーのYouTube利用率:89%(Facebook 90%)
世界のYouTube視聴回数ランキングでも13位と上位に入っています。
参考)
https://wearesocial.com/digital-2020
https://datareportal.com/reports/digital-2020-vietnam
国や学校もYouTubeを活用
ベトナムはYouTubeだけではななく、動画全体への興味が高くなっています。
We Are Socialのデータによれば、ベトナムのインターネットユーザーのうち95%が動画を観ており、その中でもVlogの視聴が5割以上を占めています。
日本では動画視聴が74%、Vlogが11%なので、ベトナム人の動画コンテンツへの興味が高いと言えるでしょう。
2020年はコロナ禍で外出自粛生活が長引き、自宅でネット動画を視聴する機会が更に増えました。そのため、ベトナム保健省もYouTubeチャンネルを開設し、コロナ禍の状況とその予防方法に関する情報を発信するようになりました。
また、大学など多くの学校では、オンライン授業を行うためのプラットフォームの1つとしてYouTubeを活用するようになっています。
YouTubeは幅広い層に浸透している
若者はもちろん、高齢者の間でもYouTubeはますます人気になってきています。
50代・60代の人が、テレビで配信されるバラエティーやお気に入りのドラマをYouTubeアプリで楽しんでいるのをよく見かけるようになりました。また、ただ見るだけではなく、自分のチャンネルを作る高齢者も増えています。
大人に限らず、子供にとっても魅力的なコンテンツが多く、YouTubeチャンネルの試聴回数トップ10の中に子供向けコンテンツが3つもあります。
子供向けコンテンツは、エンゲージメント率が非常に高く、今後も引き続き高い伸長率で拡大していくと予想されています。
有害・不適切なコンテンツで実被害も
ベトナム情報通信省・放送電子情報局の調査によると、現在ベトナムには、約15,000のYouTubeチャンネルがあり、登録者100万人以上のチャンネル数は350とのこと。
そのうちYouTubeマネジメント会社によって管理されているチャンネルは、総数のわずか30%、約5,000チャンネルだけだと言われています。そのため、危険で不適切な動画が表示されることも珍しくなく、子供にとって有害な動画も混じっている状況です。
そうしたなか、ベトナム国内では、子供がYouTubeの動画を真似し、自分の身体に有害な行為をして死亡する事故が相次いでいます。
例えば、2020年10月に「ハングマンゲーム」という動画を真似して、5歳の女児が寝室で首を吊り、死亡するという事故が発生しました。また、2020年11月には、9歳児が動画を真似して爪切りを飲み込むという事故も起きました。
このような事故が続いたため、YouTube側はチャレンジ動画などを禁止しました。しかし、YouTubeは巨大な規模のため、子供向けのアプリ「YouTubeKids」を使わせたり、年齢制限を設定したりしても、有害なコンテンツを完全に排除することはできません。
忙しくて子供の遊び相手をしてあげられない時、YouTubeを使わせる方も多いですが、危険な動画を子供に見せないよう、親としては注意が必要です。
ベトナム政府による有害コンテンツ対策
有害コンテンツの掲載を制限するために、YouTubeとベトナム情報通信省は、様々な対策を行っています。
2020年の12月、ベトナム情報通信省・放送電子情報局は、でたらめ・ギャンブル・暴力を含む4つの大人気YouTubeチャンネルへの広告費の支払いを停止、チャンネルを削除しました。
他者を不快にさせる、または法律に違反するチャンネルを見つけた場合、そのチャンネルに対する広告料の支払いを停止させる処置を行っています。
また、2020年12月のYouTubeの報告によると、7~9月に規約違反により削除されたベトナムの動画の本数が17万3247本となり、削除数で世界9位、東南アジア2位となったそうです。
ベトナム政府からの削除リクエスト理由の80%は「政治批判」ですが、2020年になり、「規制対象の商品やサービス」が理由で、削除リクエストされる動画が3倍近く増えてきました。
デマ情報、性的・暴力的なコンテンツ、嫌がらせ・いじめ、スパム・欺瞞行為・詐欺などのコンテンツが含まれる動画が削除対象となっています。
ベトナム情報通信省は公安省と協力して、悪意がある、または有害なコンテンツを作成するユーザーを厳格に処罰してしています。
そして、一般ユーザーが対象となるコンテンツを発見した場合、当局のホットラインに報告することも促進されています。
当局は、金銭的ペナルティに加えて、海外プラットフォームを介した取引をしている口座情報を提供するよう、銀行に要求を出しています。これは問題のあるチャンネル所有者への支払いをブロックするためです。
まとめ
YouTubeは日常生活だけでなく、ベトナムの政治・社会・教育にも大きな影響を与えています。気軽に動画を楽しめる反面、悪い影響もあり、大きな被害を受けることもあります。
この状況を改善するためには、ユーザー側がYouTubeを利用することで自分へどんなメリットやリスクがあるか考える必要はあるでしょう。
そして、YouTuber達は自分のコンテンツの影響を意識しながら動画を作り、YouTube社はAI利用などで有害コンテンツの拡散防止対策をより徹底的に実施することも、同時に求められていくはずです。
(執筆:ヴ ティ フオン リエン 編集:ヤマシタノリヒサ)