近年、インフルエンサーマーケティングは、企業が消費者とつながる新たな方法として積極的に取り入れられ、ベトナムでもデジタル経済を大きく動かす原動力となっています。
本記事では、2023年におけるベトナムのインフルエンサーマーケティングの動向を総括し、主要なトレンドや各プラットフォームの勢力図、インフルエンサーの影響力などに焦点を当ててお伝えしていきましょう。
インフルエンサーマーケティングは、消費者が商品に出会うまでのプロセスを容易にし、出会ってから購入までの意志決定もよりスムーズにしています。ベトナム国内では、特にメジャーなSNS内でこのアプローチが使われ、企業と消費者の絆を強める上で大きな効果をもたらしています。
まずは、ベトナムにおけるソーシャルメディアの活用について全体像を見ておきましょう。
「We are social」の2023年1月のレポートによると、ベトナムのSNS利用者は人口の71%にも上っています。
We Are Social & Meltwater (2023)、「DIGITAL 2023: VIETNAM」、 2023年2月13日より
「また、ソーシャルメディアマーケティングなどを専門とするWebメディア「INSG.CO」によれば、
「ベトナムのインターネットユーザーの78%はソーシャルメディアの利用に2時間28分を費やしています。さらに、そのうちの77%は、インフルエンサーが勧める商品を購入するよう影響を受けたことがあります」
とのこと。ベトナムではインフルエンサーが消費者の購買意思決定に重要な役割を果たしていることがわかります。
東南アジアでは口コミが効果的なマーケティング戦略として根付いており、インフルエンサーに対するこの高い信頼もその文化から来ているものと考えられます。
次に、ベトナムにおけるSNSの2023年のトレンドを見てみます。
2023年、TikTokはベトナムで最も急成長したプラットフォームとなりました。前出の「We are social」のデータによれば、2023年初頭の時点でTikTokの18歳以上のユーザーは4986万人。潜在的な広告リーチは2022年初めから2023年初めまでに24.9%上昇したとされているようです。
また、動画系のプラットフォームで言えば、YouTubeのユーザー数は2023年初頭の時点で6300万人。こちらも2022 年初めから 2023 年初めまでに潜在的な広告リーチは0.8%増加しています。
ベトナムではこれら動画投稿系のSNSが優位になってきており、新興インフルエンサーも多く参入してきています。
一方、Facebookのほうはユーザー数は6620万人と依然として多いものの、ユーザー数の増加は頭打ちになっているようです。潜在的広告リーチも、2022 年から 2023 年の間に6.0%減少しています。
同じメタ社が運営するInstagramでも、2023年初頭のユーザー数は1035万人と、他と比べて多くはありません。
このように、メタ社のプラットフォームの人気が減少しており、動画中心のプラットフォームに移行しつつあるのがベトナムの現状です。
ユーザー数の増加とともに、TikTokやYouTubeにもインフルエンサーが続々と登場していますが、インフルエンサーの動向もフォロワー数の規模によって少し傾向が異なります。
インフルエンサーは大きく分けると、フォロワー数が100万人以上規模のメガインフルエンサー、10万人〜100万人規模のマクロインフルエンサー、1万人〜10万人規模のマイクロインフルエンサー、数千人規模のナノインフルエンサーとなります。
この中でもメガやマクロは一部のインフルエンサーであり、ほとんどのインフルエンサーはマイクロあるいはナノに分類されます。
アメリカの調査会社Affable Technologies, Incの調査によると、2022年時点のベトナムではマイクロインフルエンサーの数が最も多く、次に多いのがナノインフルエンサーとなっています。ただし、人数が多いからと言ってただちに販促に優位な層だと断言することはできません。
同調査によれば、最もエンゲージメント率が高い層はナノインフルエンサーで、平均して3.6% のエンゲージメント率となっています。エンゲージメント率は、インフルエンサーとフォロワーとの関係性の深さや交流の頻度にも影響されるものですが、ナノインフルエンサーは家族や親族、友人と、親しく信頼性の高い人がフォロワーに多くいます。このフォロワーとの親密な関係性が、エンゲージメント率を高めているというわけです。
したがって、ベトナムのSNSマーケティングにおいては、こうしたナノインフルエンサーを利用することによって、親密な関係性の中で商品の話題を作り出してもらうことが効果的だと考えられます。
複数のナノインフルエンサーとコラボレーションすれば、インフルエンサーキャンペーンの成功率を大幅に高めることができるでしょう。
また、小規模なインフルエンサーの中でも、専門性の高い投稿をしているインフルエンサーを起用すれば、特定のターゲットやコミュニティにリーチすることが可能となります。
インフルエンサーになるための障壁も低く、TikTokやYouTubeのようなプラットフォームでは今後さらにインフルエンサーマーケティングのニーズは増していくと考えられます。
前述したとおり、2023年に台頭してきたSNSはTikTokではありましたが、Facebookは現在もユーザー数はトップで、インフルエンサーマーケティングには欠かせないプラットフォームとなっています。
また、日本のLINEのようなメッセージ系SNSとなる国産アプリZaloも、ベトナムのSNSユーザーの90.1%が利用しており、マーケティングでも注目を集めています。
ブランド・コマース事業を手がける「AnyMind Group」による「State of Influence in Asia 22/23」によれば、インフルエンサーマーケティングの場としてベトナムで最も選ばれたプラットフォームはFacebookとなっています。全マーケティングキャンペーンのうち、Facebookは79.1%を占めており、次いでInstagram(9.8%)、TikTok(7%)、YouTube(4.2%)とのこと。
現状では、TikTokやZalo、YouTubeの成長を監視しながら、Facebookをうまく活用していくのがよいかもしれません。
ベトナムでインフルエンサーマーケティングにおいてはどんなジャンルの商品が効果を出しているのか見ていきたいと思います。
「現在、ベトナムにおいて大きな注目を浴びているジャンルのひとつが、教育関連です。
ベトナムのメディア「HANOI TIMES」の2022年の記事にて、同年8月8日にベトナム国立教育科学研究所とユネスコによって開催された会議では、ベトナムの教育への投資は過去10年間で着実に増加しており、2022年の段階では国家支出総額の18%を占めていることが明らかにされています。
「教育関連の商品やサービスを提供する企業は、ベトナム市場に効果的に浸透させるため、インフルエンサーマーケティングに積極的に乗り出し始めています。
インフルエンサーマーケティングに成功している例としては、たとえば英会話学習アプリ「Elsa」が挙げられます。ElsaはMC、女性ブロガー、YouTuberや、200万人以上のフォロワーを持つコンテンツクリエイターのKhanh Vyなど、さまざまなプラットフォームで英語力の高いトップインフルエンサーとコラボレーションし、顧客獲得に結びつけています。
Instagramでベトナムのインフルエンサーを調べてみると、マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーが混在してインフルエンサーマーケティングを支配していることがわかります。
フォロワーとのつながりが強い、注目のマイクロ/ナノインフルエンサー
シンガポールのインフルエンサーマーケティングエージェンシー、Affable Technologies, Incが、2023年第二四半期に躍進したインフルエンサーをまとめています。
Instagram フォロワー数:8.9万人
TikTok フォロワー数:2.2万人
YouTube フォロワー数:1.7万人
Instagram フォロワー数:4,400人
Instagram フォロワー数:2.7万人
フォロワーの増加率が顕著なインフルエンサーとしては、俳優兼モデルのアン・トランが挙げられます。彼のコンテンツは、ライフスタイル、ファッション、キャリアの最新情報を中心に展開され、貴重な洞察で視聴者を惹きつけています。
3カ月で381.20%というフォロワー増加率を達成し、推定リーチは28.51万人、インプレッションの合計は42.77万人となっており、フォロワーへの影響力はかなり大きなものとなっているでしょう。
世界の市場でインフルエンサーマーケティングは現在、極めて重要な役割を担っています。
2023年、ベトナムのインフルエンサー広告市場における広告費は6000万米ドル以上となっており、成長率も前年比で約25%と目覚ましい伸びを示しています。この広告費の急増は、同国におけるインフルエンサー・マーケティングの盛況ぶりを浮き彫りにしていると言えます。
成長を続けるベトナムのデジタル市場で競争力をつけていくためには、SNSの動向を微細に洞察し、適応していく必要があります。インフルエンサーマーケティングを積極的に取り入れ、柔軟に対応していくことが、ベトナム市場への進出のカギとなるでしょう。
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(執筆:Du Thị Thùy Dung(ズン) 編集:クリスク海外事業部)