こんにちは、クリスク・ジャパンの劉(リュウ)です!
最近YouTubeを開くと、トップ画面に必ず表示されるようになった「ショート」、みなさんはご覧になっていますか?
YouTubeショートは最大60秒の縦長動画です。スマホ向けの、いかにもTikTokやInstagramリールズを意識したフォーマットですが、実はYouTubeショートが世界中で急成長しており、マーケティングへの活用事例も出てきています。
通常の動画の再生数を超えたYouTubeショート
YouTubeショートは2020年7月にサービスを開始したのち、2021年7月には日本を含む100ヶ国以上の国でも使えるように。
そして、早くも2022年第1四半期には60秒未満の動画が60秒以上の動画の再生回数を逆転しました(アメリカTubular Labsの調査より)。
また、2022年6月には、YouTubeショートの月間ログインユーザー数が15億人以上に達していると発表されました。一方、TikTokは2021年9月時点で月間ユーザー数が10億人と報じられています。
YouTubeショートは、すでにTikTokと並ぶ規模のサービスとなっていることがわかります。
TOPブランドもショート動画をプロモーションに活用中
ショート動画人気の高まりに伴い、すでに多くのブランドがYouTubeショートを活用しています。
プラットフォームを巧みに使い分けるNIKEのYouTubeショート活用術
インフルエンサーマーケティングに定評のあるNIKE。
Instagramアカウント(フォロワー数2億3,100万人超)では質の高い写真や動画でブランドイメージを向上。
TikTokアカウント(フォロワー数260万人)ではアスリートやインフルエンサーをフィーチャーして商品の使用イメージを伝えています。
一方、YouTubeショートではYouTuberと組んだおもしろ動画を多く発信し、ブランドの身近さや懐の深さを伝えています。
有名YouTuber「Kristen Hanby」のショート専門チャンネルでアップされたチャレンジ動画。再生回数1億回も目前
靴を履いた指先がミニマウンテンバイクを乗り回す「BMX Finger」とのコラボ動画
ユーザーやショップからは多くのレビュー動画が上がり、長編動画ではしっかり世界観を伝えきることが可能なNIKEならではのプラットフォーム使い分け術かも知れません。
新機能「Shoppable Shorts Challenge」活用第1号!コスメブランドGlossier
アメリカのD2CコスメブランドGlossierは、新商品のアイライナーペンシルのプロモーションとして、YouTubeショートの新機能を活用したキャンペーンを開催しました。
キャンペーンに参加したインフルエンサーは、ブランドが指定したフォーマットに沿って、規定のタグ#WrittenInGlossierを使ってYouTubeショートを投稿する「Shoppable Shorts Challenge」を行いました。
期間中は動画のタグ#WrittenInGlossierをクリックすることでキャンペーンサイトに誘導され、商品を購入することが可能となっています。
ブランドがリリースしたキャンペーンのフォーマットとなる動画
#WrittenInGlossierチャレンジに参加したインフルエンサーの動画。女性ユーザーの熱いコメントが並ぶ
Glossierはキャンペーンの結果を公開していません。しかし、YouTubeもGlossierも同様の取り組みを継続すると表明しており、今後多くのブランドやショップが利用する機能となる可能性はあります。
YouTubeショート活用のメリット
このように急成長中のYouTubeショートですが、果たしてTikTokやInstagramリールズと併用する価値はあるのでしょうか?
結論から言うと、YouTubeショートを使うメリットはいくつもあります。
既存のYouTubeチャンネルの再生回数・登録者数を底上げ
YouTubeチャンネルへの集客装置として、YouTubeショートは非常に効果的です。
台湾人に日本を紹介するチャンネル「Iku老師/Ikulaoshi(Iku先生)」のサブチャンネル、「【官方】Iku老師的房間(【公式】Iku先生の部屋)」は、2021年12月17日~24日までの1週間、毎日ショート動画と通常の動画を1本ずつ投稿しました。
その結果、ショート動画を併用した期間のみならず、その翌週も同程度の再生数をキープすることができていたのです。
TikTok・Instagramリールズよりターゲットを選ばない
TikTokやInstagramは、多くの国で「若者向け」「女性向け」などの特定のユーザーに強い一方、幅広いユーザーを獲得したい場合は取りこぼしが発生するかも知れません。
YouTubeは各国で5割以上のシェアを持っているため、老若男女を取り込みたい場合に有効な選択肢となりえます。
各国のYouTubeシェア(※広告到達率ベース)
|
台湾 |
日本 |
マレーシア |
ベトナム |
タイ |
インドネシア |
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87.3% |
86.7% |
81.4% |
68.4% |
63.3% |
55.0% |
(引用元: DataReportal)
※表はクリスク再編集
初心者が気軽に作成した動画も受け入れられやすい
YouTubeショートには、TikTokやInstagramリールズほど見栄えの良さやおしゃれさが重視されない傾向があります。
手軽に編集でき、UGC(ユーザーが作った画像・動画などのコンテンツ全般)を活用しやすいのがメリットと言えるでしょう。
アメリカのトップYouTuber「MrBeast」のサブチャンネル「MrBeast 2」でも、凝ったエフェクトや演出は使われていない
YouTubeショートでのマーケティングはどんな動画を配信すべき?
先述のような世界的なブランドでなくとも、YouTubeショートをプロモーションに活用している例はあります。
YouTubeショートの運用はどのような点に気をつけるべきか、YouTubeショートを始める前に知っておきたいですよね。
ショート動画を活用するインフルエンサーの見解や、実際の事例をもとにショート動画のコツを紹介します。
YouTubeチャンネルと同じテーマやダイジェスト版を投稿
台湾の兄弟YouTuber「黃氏兄弟」は、既存のYouTubeチャンネルと同じテーマやダイジェスト版をショートとして投稿すべきだと言っています。
「すぐ知りたい」「手軽に時間をつぶしたい」ユーザーが興味を持ったあと、そのままチャンネル内の他の動画を回遊し、チャンネル登録に至ってくれる可能性が高いからです。
「黃氏兄弟」がドラえもんに扮するショートは、前日に投稿されたチャレンジ動画と同じテーマとなっている
「続きはYouTubeで!」と書かれた動画はTikTokにもたくさん上がっています。しかし、わざわざTikTokからYouTubeへ移るよりも、YouTube内で見て回れる方が視聴者にとってはスムーズですよね。
▼ショート動画自体のメリットは、TikTokを例に解説したこちらの記事もご覧ください!
シェア50%以上!ベトナムの最新TikTok事情とマーケ事例
TikTok・Instagramリールズとの動画使い回しは非推奨
YouTubeショートへ投稿できる動画は、TikTokやInstagramリールズと同じフォーマット(9:16)かつ短尺ということで、1つの動画を複数のSNSで使い回すことも可能です。
しかし、台湾の兄弟YouTuber「黃氏兄弟」は、他のプラットフォームで公開した動画をYouTubeで使い回すことに否定的です。
TikTokやInstagramリールズとはターゲットが異なるため、他のSNSでウケるエフェクトや編集が、必ずしもYouTubeショートの視聴者にハマるとは限らないからです。
実際に、筆者の同僚が公開したYouTubeショート動画をそのままTikTokでも公開したところ、TikTokらしくない編集や見た目が災いしてか、再生回数はYouYubeショートの15%未満に留まっているとのことです。
売り込みよりもハウツーなどの実用的な動画を!
YouTubeは、TikTokやInstagramリールズよりもはっきりと「『動画』を見よう」という意識でアクセスされます。そのためか、どんなに見栄えが良くても直接的な「宣伝」だけで終わってしまう動画は視聴者になじまないようです。
アメリカのオリーブオイルブランド「Graza」が運営するYouTubeチャンネルでは、レシピ動画が商品紹介動画よりも全体的に好評を得ています。
SNSの責任者であるKendall Dickieson氏の見解では、単純な商品紹介動画はYouTubeショートよりもTikTokの方が向いているとのことです。
「Graza」が公開する「パプリカの切り方」ショート動画。再生数は商品紹介動画に比べて2桁以上伸びている
中国のスマホメーカーOnePlusのYouTubeチャンネルでは、商品紹介動画に混じり、インフルエンサーやユーザーによるハウツー動画が投稿されています。
知識を求める視聴者に、「カメラ関連の機能が豊富」などの商品の強みも同時に伝えられるハウツー動画は、有効なプロモーション方法となりうるのではないでしょうか。
写真家「Alex Miller」による撮影チュートリアル動画
まとめ
2019年時点で、YouTubeへの訪問数の70%はモバイル端末からのものであると発表されています。
通常の動画よりもスマホに最適化されたYouTubeショートの快進撃は、この先まだまだ続くでしょう。YouTubeショートが当たり前のようにマーケティングの選択肢に上る日もそう遠くないかも知れません。
クリスクは東南アジアでのソーシャルメディアやインフルエンサーを活用したマーケティングの専門家として、日々トレンドの最前線に立っています。案件に応じて最適なプロモーションのご提案が可能ですので、お気軽にお問い合わせください!
参考)
H2 2022: Social Video Trends to Optimize Your Media Strategy – Tubular Labs
YouTube Shorts tops 1.5B logged-in monthly users, touted as feeder to long-form content – TechCrunch
3 Ways Brands Can Get the Most Out of Social Video – Tubular Labs
YouTube Debuts Shoppable Shorts Function With Glossier Tie-up | The Drum
Marketers Test YouTube Shorts, One More Rival to TikTok – WSJ
黃氏兄弟的 YouTube Shorts 經營秘訣 台灣影音創作者年會- iamtie(我是鐵)
Marketers Test YouTube Shorts, One More Rival to TikTok – WSJ
What Is YouTube Shorts? – The 101 Guide
YouTube by the Numbers (2022): Stats, Demographics & Fun Facts
(執筆:Liu Tzu-Yi 編集:クリスク海外事業部)