こんにちは。
クリスク・ジャパンしらにたです。
筆者は仕事柄、タイやベトナムなど東南アジア各国の旅行博に参加することが多く、日本以外の各国の観光協会などがプロモーションのために出展しているブースなどもチェックしています。
訪日インバウンドと言うと日本に来た方をいかに自分たちのエリアやお店などに呼び込むかに着目しがちですが、今回は視点を広げて、東南アジア観光客向けに台湾や韓国がどのようにプロモーションしているかをチェックしていきたいと思います。
日本・韓国・台湾への東南アジア6カ国旅行者のインパクト
日本・韓国・台湾には、どれくらいの東南アジア旅行者が来ているのでしょうか。データで見ていきましょう。
日本
100万人を超えるタイを筆頭に、各国から40万人前後が訪れています。
韓国
韓国もタイがトップですが、日本との大きな違いは、ベトナムからの観光客がほかの国よりも多い点ですね。
台湾
台湾はマレーシアがトップです。マレーシアには、中国にルーツを持ち中国語を話す中華系マレーシア人が多いことが要因だと考えられます。また、韓国と同じくベトナムがほかの国に比べて多いという特徴が見られます。
タイ以外の来日旅行者は少ない可能性も
東南アジア6カ国からの来訪旅行者数では日本が最も多いですが、旅行者数全体に占める来訪比率と総人口に対する訪問旅行者数の比率は韓国・台湾のほうが高くなっています。
東南アジアの旅行者が旅行先を選ぶポイント
東南アジア各国の人が旅行先を選ぶポイントしては、大きく下記4点が挙げられます。
それぞれ、なぜ気になるポイントなのかを詳しく見ていきましょう。
旅行費用
その国の個人消費者の経済力を示す指標として使われている1人当たりGDPを御覧ください。
シンガポールは約6.5万USDと日本のGDP3.8万USDよりも高いですが、タイ・マレーシアは1万USD前後、フィリピン・ベトナム・インドネシアは5千USD以下となり、一人あたりが使える旅行費は多くはないことがわかります。
しかしながら、台湾や韓国よりも遠い日本は旅費も高めとなってしまいます。
これはマレーシアの旅行博で販売されていたツアー商品です。右側の数字がマレーシアの通貨マレーシアリンギットで表示された旅行ツアーの金額となります。
おおよそ日本:韓国:台湾のツアー料金は、2:1.5:1ぐらいで金額設定されており、この傾向はほかの東南アジア各国でも同様です。
必然的にベトナムやフィリピンなどの旅行者は、韓国・台湾に比べ日本へ観光に行くハードルが高くなります。
距離(移動時間)
上記の時間は、主要空港からの直行便の目安時間となります。
一般的に東南アジアの各都市から日本と韓国・台湾の旅行を比較した場合、1.5〜2倍移動時間が長くなります。
日本のように連休が多いわけではない国もあるため、滞在時間が短くなることを気にする人が多いのかもしれません。
ビザ
台湾・韓国・日本で取得しやすさに差があり、それが旅行者数に関係しています。
海外旅行で大きなハードルとなるビザ※。日本への海外旅行に関しては、ベトナム・フィリピン国籍の方はビザ申請が必要となる一方、ベトナムは韓国へ、フィリピンは台湾へのビザ申請が免除されており、それが渡航者数や渡航者数の伸び率に影響を与えていると考えられます。
※一般に観光ビザと言われている短期滞在査証についての記載となります。詳しくは、各国大使館のページでご確認ください。
各国は旅行博でどんなプロモーションを行っているの?
日本・韓国・台湾は、観光先としての魅力を東南アジア各国に向けてプロモーションしているのでしょうか?
筆者が見てきた旅行博やイベントなどを元に説明したいと思います。
日本:マンガ・アニメや日本独自の文化を訴求
日本への観光誘致については、JNTOが東南アジア各国で開催している「ジャパン・トラベルフェア」や日本に関する様々なイベントに地方自治体がブース出展をするなどの活動を行っています。
▽文化体験
浴衣の着付けや茶道体験などの日本文化を紹介
▽アニメ・漫画
人気のキャラクターのぬいぐるみをブースに連れてくる、漫画のコスプレをしてブースで節接客するなど
詳しくは、過去にコラムで紹介しているこちらの記事などをご参照ください。
韓国:圧倒的なK-Culture人気と独自文化を活かしたプロモーション
韓国は、東南アジア各国で大人気のK-POP、K-DORAMAなどを活かしたプロモーションが多く見られます。また、K-DORAMA人気からか韓国の民族衣装である韓服の着付け体験も良く見られます。
▽K-Cultureを活用したプロモーション
ソウル市は世界的に大人気な韓国の男性ヒップホップグループ・BTSをアンバサダーに起用したプロモーション動画を制作。BTSがソウルの魅力を伝える内容になっており、韓国やソウル市に興味のなかったBTSのファンも興味を持ってもらえるような内容になっています。
▽BTSとは
BTSは、世界的な人気を誇る韓国の男性ヒップホップグループ。Instgramフォロワー、約2,000万人。北米、南米、欧州、アジアなど約70箇所で開催されるワールドツアーの動員数は150万人を超える。また、2018年5月にはアメリカの音楽チャート・ビルボードで1位を獲得。東南アジア各国での人気も非常に高い。
タイ・バンコクの書店にディスプレイされたBTSのアーティストブック。ベトナムやマレーシアなど、東南アジア各国でも彼らの人気は非常に高く同様の光景が見られます。
台湾:東南アジア各国からのコスパの良さを活かし「台湾=楽しい」国を訴求
台湾は、東南アジア各国からアクセスの良さ(タイ・バンコクからは、約4時間程度)や物価の安さなどを背景し、とにかく楽しい観光地ということを旅行博などのステージでアピールしています。
日本・韓国と比較した場合、下記の特徴が感じられます。
- 歌の踊りのステージパフォーマンスがとにかく賑やかで音が大きい
- ステージの最後には、お菓子などを配ることによって最後までつなぎとめる
- 台湾=楽しい観光地、ということを出演者だけでなく、司会やスタッフなどが一体になって、来場者にアピールする
日本や韓国のブースが、より観光地の詳細などを知ってもらうためのクイズなどのステージ活動を行うのに比べて、台湾はまずは大きな音と楽しそうな雰囲気で人をひきつけ、それから知ってもらう、愛着を感じてもらう、ということに注力をしていると感じます。
まとめ
日本のインバウンド市場においては、特定の国の観光客が占めるリスクはこれまでも指摘されてきました。しかし、中国・韓国・台湾・香港からの旅行者の比率の高さは依然として続いています。
海外旅行者の増加が著しい東南アジア各国からの旅行者獲得のためには、日本だけではなく韓国や台湾などの他国の候補地までを含めることで、新しいプロモーション施策のアイデアにつながるかもしれませんね。