日本企業にもチャンスあり！？マレーシアの重要イベント「ハリラヤ」マーケティングのコツ

まずは車やガソリンですね。マレーシアは車社会なのですが、ハリラヤではお祝いのために実家に帰省する習慣があるので、そのために新車を買う人もいますし、ガソリンも必需品となります。

また、実家が遠い人もいるので、航空会社も主に国内線をハリラヤでPRしていきます。

お祝いの日なので、ハリラヤに合わせて新車を買って、晴れ晴れと実家に帰りたいという人も多いんです。

また、家族みんなで同じ色で揃えた正装をする習慣があるので、服や靴など衣料品も売れます。家族ごとに毎年「今年は何色」とテーマカラーを決めて買うんです。

今年は黒にしました。ハリラヤの服の色にも年によって流行があって、2024年は黒が流行っているんですよ。事前にSNSではオレンジが流行色と言われていましたが、蓋を開けたら黒を買った人が多かったようです。黒は他の色とも合わせやすく、帯や女性のヒジャブは他の色にするなどコーディネートも楽しめますね。

ちなみに去年は黄色が流行っていました。

ハリラヤで着るものはムスリムの正装なので、普段はあまり着ません。毎週のお祈りや結婚式のときなどに着るものですね。でも、ハリラヤの時期にはスーパーの定員さんもハリラヤ服でお店に出ていたりしますよ。

それから、家族や親戚、友人知人で集まるときに食べる「ハリラヤクッキー」も買い物の定番です。

クッキー自体にこれといって決まったレシピや形はないんですが、伝統的にクッキーを食べる習慣があるんです。駄菓子メーカーから高級スイーツブランドまでいろいろな企業から販売されるので、品質もピンキリですね。ただ、友達や家族を家に招いてシェアするものなので、自分が食べて美味しいと思ったメーカーのクッキーを選んでいます。

日本のお菓子メーカーにもチャンスはあると思いますよ。

また、もち米を椰子の葉で菱形に包んだ、日本の「ちまき」に似た「クトゥパ」という料理も昔からハリラヤでよく出てきますね。

昔はそれぞれ家で作っていたんですが、作るのは大変なので、最近はもう少し簡単なものにする家も増えていますね。

実家に帰ってこうしたご馳走を食べて、子どもがいればお年玉をあげて、盛大にお祝いをするのがハリラヤです。結婚している人は、夫婦それぞれの実家に日を別にして一緒に帰ります。

ハリラヤは1年で一番大事なイベントですから、どんな業界もハリラヤ一色になっていきます。宗教的な風習ではあるものの、マレーシアではお祭りという雰囲気で、あらゆる業界が盛り上げていくんです。

スーパーにはハリラヤクッキーがずらりと並ぶだけでなく、他のお菓子も「ハリラヤ限定」と謳った商品が出てきます。僕が見たエッグタルトのお店では、ラマダンプロモーションとハリラヤプロモーションの両方をやっていましたよ。

ラマダンのときには昼食がとれないので、「家に持ち帰って朝食用に」といった言葉で売られていました。

ハリラヤでは、帰省して家族みんなで食べられるように、たくさん買うと安くなるというプロモーションになっていましたね。ハリラヤの期間中には、親子で買い物に来て、お母さんが娘さんに「あなたの家には何個必要？」などお持たせでお菓子を買ってあげる光景もよく目にしますよ。

まとめ買いを訴求しているラマダンセールの看板

家電やプレゼントなど高価なものはクリスマスやシングルデー（独身の日：11/11）、ブラックフライデーのほうが売れますね。ハリラヤではお年玉にお金を使うので。

でも、たとえばマレーシア全土に店舗展開しているホームセンター「MR.DIY」ではタンブラーやデキャンタ、カトラリーなどパーティーで使えるオシャレなキッチン雑貨やインテリア用品などが、ハリラヤ用として売られています。

オンラインショップのShopeeでも、もちろんハリラヤプロモーションでこうしたものがたくさん売られていますよ。ハリラヤ限定割引などもあります。

ハリラヤクッキーを入れるオシャレなボトルを買いました。クッキーを詰め替えておいて飾ると見栄えがいいですし、友人が来た時にも一緒につまみやすくなるので。

お菓子にも言えますが、どうしても普段マレーシアで売られているものより価格が高くなると思うので、高級品に振り切るとか何かしらの戦略が必要だとは思います。

ラマダン中から1カ月半ほどはハリラヤ関連のプロモーションがあらゆる場所で展開されます。

スーパーでもBGMにハリラヤソングが流れますし、SNS広告もビジネス向け商品以外はほぼハリラヤ仕様になりますね。

イスラム教を象徴する緑色を使い、月や星、ランプなど夜を表すデザインになっていることが多いです。イスラム教では、1日の始まりは日没からとされているからですね。

また、先程のちまき「クトゥパ」を象徴する、ひし形が2×2列に並んだ意匠も装飾として使用されます。

ハリラヤプロモーションに多い広告クリエイティブ例（画像はイメージ）

もちろんです。ストーリーのある5〜10分の動画広告がよくシェアされていますね。懐かしさや伝統を押し出して、「家族を大事にしよう」「故郷の家族を忘れないで」といったメッセージが込められたドラマが多いです。

たとえばガソリンの会社なら、帰省中に家族でガソリンスタンドに立ち寄るシーンなどを入れて、感動的なドラマを作って流しています。
https://www.youtube.com/watch?v=k0xvJ3jZwIE
https://www.youtube.com/watch?v=RROuAnGO3Yc
https://www.youtube.com/watch?v=hJC-UF_fNsU
https://www.youtube.com/watch?v=af3CV9OXyok

そうですね。YouTubeではおすすめにハリラヤ関連のプロモーション動画がどんどん上がってきます。いい動画があればFacebookなど他のSNSで友達にシェアしたり、バズった動画はテレビでも流れたりします。

Facebookで流れてくるショート動画も、ハリラヤ関連のものが多くなりますね。トヨタやホンダも出していますよ。

はい。ハリラヤの前にはラマダンが1カ月ありますが、ラマダン中から徐々に増え始めます。学校や会社では、「あれ見た？」と評判になったりもします。

人気の芸能人や有名人を起用して、たくさんの企業がドラマ風の動画を作ってきますね。

ハリラヤ商戦は年齢問わず多くの人が対象になりますし、動画の目的も認知獲得が主眼に置かれています。なので、インターネット上の有名人よりも、もっと広く知られている芸能人などが起用されることが多いです。

動画だけでなく、街中の看板なども同様ですね。SNSでの広告でも、インフルエンサーを使うより、普通のハリラヤデザインのバナー広告のほうが一般的です。

ここ数年はペットを飼う人が増えているからか、ハリラヤファッションに身を包んだ猫が出てくるテレビCMもよく見かけますね。

また、ラジオ広告もこの時期はハリラヤ一色になります。耳に残るハリラヤソングがよく流れていますね。

はい、もちろん毎日見かける看板もハリラヤ仕様になりますね。

それから、実店舗では買い物をするとお年玉用のポチ袋をノベルティとして配るお店が多いんです。銀行やジュエリーショップ、アパレル、化粧品、塾などの企業が会社名やロゴマークをデザインしたポチ袋を作っていて、この時期の特典としてはよく見られますね。

認知度upには効果があると思います。

「ポチ袋無料配布！」が謳われた店頭の看板

はい。

この時期はハリラヤを絡めた動画広告を出している銀行も多いですよ。

はい、毎年シングルデー・ブラックフライデー並みの規模や割引率のセールが開催されていますね。

各ECプラットフォームは、InstagramやTikTok、YouTubeでキャッチーなコマーシャル動画やショート動画を上げてPRしています。
https://www.youtube.com/watch?v=Ptj5Ugcj9-M
https://www.youtube.com/watch?v=Xw7gTxxz57w

いえ、他の民族の人にとっては、ハリラヤはただの休暇となります。マレーシアでは民族によってそれぞれ大切にしている行事を祝うので、他の民族が盛り上がっているところにはあまり乗らないですね。

ただ、休暇なので旅行に出かける人も多いです。と言っても、イスラム系の帰省ラッシュで道路は混むので、国内旅行よりも家の近くや海外旅行に行く人がほとんどですね。インバウンド需要を狙っても良いかも知れません（笑）。