みなさんこんにちは!クリスク・ジャパンでディレクターを務めております秋山です。
クリスクでは東南アジア・東アジアへの進出を考えているクライアントの皆様に、日本国内のスタッフと各国の現地スタッフとで連携してマーケティング情報を提供し、サポートしております。
当社には海外渡航歴の多い日本人スタッフや、日本への造詣が深く熱意も強い外国人スタッフばかりが在籍しています。私も海外出張や海外赴任の機会をずっと探っており、今年ついに、以前から興味があったマレーシアでの長期滞在に踏み切りました!
2024年2月から約90日間マレーシアに滞在し、現地で仕事をしつつマレーシアの広告・店舗・プロモーション事情を実際にじっくり観察してきました。マレーシア人には当たり前で気づけない、マレーシアでの広告やオフラインマーケティングの実態を日本人目線でレポートします!
マレーシアのオフラインマーケティングのポイント:車社会・多民族国家・OMO・ショッピングモール
マレーシアで体験した、日本の常識では思いつきづらいポイントは主に以下の4点です。
- ・車社会なので、日本よりも看板が多い(接触頻度が高いため、刷り込み効果が期待できるかも)
- ・多民族国家ゆえ、起用する芸能人・モデル・インフルエンサーの人種や、広告に載せる言語もターゲットを考慮する必要がある(人種間の交流が少なく、混じり合わない。使っているSNSすら違うことも)
- ・店頭にもポップや看板が多い。また、SNSへの導線を確保する意識が高い(オフライン・オンライン両軸でのマーケティング施策がマスト)
- ・ショッピングモールでのイベントや販促が有効(ショッピングモールに通う行動習慣が形成されている。人が集まる)
それぞれについて、以下で詳しくご紹介します。
車社会のマレーシアでは道路のあちこちに広告が
まず、マレーシアでは日常的にとても頻繁に目にする広告があります。それが、交通広告です。
マレーシアには電車もありますが、メインとなる交通手段は車です。国民の9割が車を所有していて、道路には交通広告が日本よりもたくさん見られます。
車で走っていると、道のいたるところに広告の看板やのぼりがあり、とても賑やかです。主要な道路では、すべての照明灯の柱に同じ広告が連続して掲げられていることもあり、日常的に通っていると自然と覚えてしまいます。
街中を走っていると、日本車や、日本の化粧品会社の広告もよく見られます。車社会なので、トヨタやホンダはマレーシアでも有名です。
空港が近づくと、航空会社の看板の他に、マレーシアから海外へ行く人、自分の国へ帰る人などに向けたお土産品の看板が目立ちます。日常的には買わないものでも、「そうだ、お土産にこれを買っていこう」と看板を見て思い出すことができます。
道路に交通広告を出す場合には、その先でその商品が買える立地を選ぶなど、カスタマージャーニーの設計もポイントとなりますね。
また、マレーシアでも高速道路には「RFiD」というETCのようなシステムがありますが、料金支払所の付近にもたくさんの広告が出ています。車が速度を落とすため、広告も目に入りやすいからではないかと思います。
日本ではドライバーの脇見運転などが問題視されそうですが……。
交通広告は、車で移動する人をターゲットにしたものだけでなく、歩行者の目に入りやすいものも街中にはたくさんあります。
日本でいう渋谷のような繁華街ブキッ・ビンタンには、大きな看板をつけた建物が建ち並んでいました。その建物に入っているお店の看板以上に、広告看板が目立ちます。
ブキッ・ビンタンにはドン・キホーテや伊勢丹など、日本系のお店も見られます。ドン・キホーテの近くには、ロート製薬の化粧品「肌ラボ」の広告看板も見られましたが、やはり対象の品が買い物できるお店の近くに広告を出すというのは重要だと思いました。
▼ 交通広告をはじめとする、各種広告のマレーシアでの使い分けポイントはこちら
多民族国家ならではの広告表現も多数
マレーシアの民族構成は、マレー系が約6割で、中華系が約2割、インド系の人もいます。そのため、広告モデルにも、イスラム教のヒジャブを着用したマレー系の人や中華系の人など、多様な民族が起用されているのをよく見かけます。
また、マレーシアは国民の約6割がイスラム教徒です。ですから、食べ物やサプリメントなど口にするものの広告では、材料がハラル(イスラム教で許されたもの)に対応していることを示すハラル認証マークや注意書きが必ずつけられています。
肌に触れる化粧品につけられていることもあります。
ハラル対応をしている飲食店などでは、店頭に「ムスリムフレンドリー」などと書かれた紙が貼り出されています。印刷されたQRコードを読み込むと、該当のレストランがムスリムフレンドリーである証明が見られるようです。
イスラム教徒がそれなりに多いマレーシアでは、販売する商品にはことあるごとに「ハラルマーク」「ムスリムフレンドリー」が求められるようです。
(なお、「ハラルマーク」の認証はたいへん厳しく、たいていの企業はまず「ムスリムフレンドリー」の取得を目指すのだとか)
食品に比べ、コスメや薬などにはハラル対応を求める声が多少厳しくなくなるそうですが、ハラル未対応製品に現地のモデルやインフルエンサー(KOL)を起用するとハラル認証済みと勘違いを招く可能性があります。
日本製品はもともと品質への信頼性が高いと見られているため、日本のコスメのPRでは日本人インフルエンサー(KOL)を起用するのが良さそうです。
余談ですが、日本の製品への品質・安全面の評価を活用していると見られる看板広告もありました。
日本企業のものではありませんが、「BUATAN JEPUN」(日本製)、日本語で「ごふんでしわの軽減」と書かれることで、日本製の化粧品を好む人へのPRとなっているのではないでしょうか。
▼ 多民族国家マレーシアで広告を出すときのポイントはこちら
オフライン店舗でもオンラインへの動線確保
マレーシアでは、店頭〜店内の看板やサイネージ、張り紙、ポップも日本より多く見られます。地方の超小規模店舗を除けば、ほぼどの店舗にも複数のバナーが掲示されており、セールを開催していなくても、何かしらのポップが多数出ていました。
「5個買うと1つ無料」「SNSでフォローしてくれたら○%オフ」「クチコミを投稿してくれたら……」など、セールシーズンに限らず、普段からお得なキャンペーンを実施しているお店が多く、店頭や店内ではそうした情報があちこちで目に入ります。
マレーシア人に「買いたい」と思わせるには、いかにお得かをアピールすることが重要なようです。
▼ お得な「セール」「ノベルティ」に殺到するマレーシア人がわかる記事はこちら
店頭掲示ではキャンペーンの他にも、SNSアカウントへのフォローを促すポップが至るところに掲示されています。日本以上にSNSの利用時間が長い東南アジアならではかも知れませんが、どの店舗もSNSへ囲い込む意識が非常に高いように感じました。
有力なPR媒体「ショッピングモール」
マレーシアで、顧客との接点として欠かせない場が「ショッピングモール」です。
国内の各エリアに大型ショッピングモールが2〜3軒はあり、週末をショッピングモールで過ごすマレーシア人はとても多いです。
ショッピングモールで買い物をするだけでなく、モール内の子どもが遊べるエリアに家族連れで行ったり、食事をしたり、あるいは単に涼みに行ったり。人々は気軽にモールに足を運んでは長時間滞在し、たいていの用事をショッピングモールで済ませてしまいます。毎週末どころか、毎日(!)通う人も決して珍しくありません。
暑い屋外でのアクティビティよりも、健康面・安全面でメリットが大きく、子供の頃から家族に連れられて通うことで習慣が定着してしまう面もあるでしょう。
なお、弊社のスタッフに話を聞く限りでは、他の東南アジアの国々でも共通の傾向が見られるようです。
プロモーションイベントの開催を検討する際にも、各国のスタッフからはまず「ショッピングモール」が提案されるほど、東南アジア人の生活には欠かせない存在のよう。
実際に、筆者がマレーシアに滞在した前後の時期にも、ショッピングモールで「さくらまつり」や「盆踊り」などの日本に絡んだイベントが開催されていました。
こういったイベントで商品サンプルの配布やモール内広告、割引キャンペーンなどを実施することで、現地の人々の認知を得ることができるかもしれません。
その他にも、ショッピングモール内では、壁に大きく設置された「参加型」の広告が掲示されていました。
通りすがった人が触って遊べるものや、コメントを書き込めるものなど、参加型広告はマレーシアでよく見かけます。今はオンライン上でも、「みんなでTikTokにダンス動画を投稿してね!」などSNSを使った参加型広告もよく見るようになりました。
まとめ:マレーシア人の行動習慣に沿ったマーケティング施策を
マレーシアでは交通広告やショッピングモールでの広告が非常に活発で、とにかく街もモールの中もにぎやかな印象でした。広告の内容も、さまざまな言語や、さまざまな民族のモデルが使われていて、マレーシアが多民族国家であることを感じます。
また、ショッピングモールに限らず、まとめ買いやSNSフォローをするとお得になるキャンペーンなどは、街中のさまざまなお店で見られます。
オフライン広告でも、企業やお店のSNSアカウントにつなげるためのPRはとても多く、オフライン・オンラインの両面からプロモーションが活発に行われていることがわかりました。
今回はマレーシアに長期滞在する機会を得たため、マレーシアの文化や背景込みで現地のマーケティングを理解することが出来ました。
各国の現地スタッフを擁しているクリスクでは、ターゲット国のインサイトを踏まえたマーケティングやプロモーションのご提案が可能です。ぜひお気軽にお声がけください!
(編集協力:大西 桃子)
▼ 今回のマレーシア滞在の主目的:訪日マレーシア人に響くインバウンドマーケティングを考察しています