お世話になります!クリスク・ジャパンディレクターの秋山です。
「忖度なしのインバウンド観光DX!」と題したトークセッションが行われ、星野リゾートの代表である星野氏、JR東日本の常務である高橋氏、フードロスバンクの山田氏など豪華なスピーカー陣が登壇し、日本のインバウンド観光における宿泊、交通、食に関するDX(デジタルトランスフォーメーション)課題について意見を交換しました。
特に印象的だったトピックを要約し、共有させていただきます。
値上げによりJAPAN RAIL PASSのサービス向上
- 10月から価格を1.7倍に値上げしたことで、予約サイトからの購入や、使えなかった沿線、及び新幹線の便での使用が可能になった。
- 予約サイトができる前は、各国現地にある日系の旅行代理店で購入する方法がとられていた。
- 大幅な値上げについては、JRとしては円安の影響もあり、売り上げへの影響に問題はないと判断した。
- 引き続きJAPAN RAIL PASSは使用期間が決まっているため、星野リゾート始め宿泊業や地方観光地の目線で考えると、連泊がし辛く利益が上げにくいシステムとなっている。
伝統芸能すらネット予約不可。日本のDX課題
- 飲食店のうち96%近くがオンライン予約を導入しておらず、日本語で電話ができない外国人は来店予約ができない状態。
- 日本を代表する歌舞伎や相撲のチケットすらオンラインで買うことができない。外国人に日本の魅力を発信する上で、この状態は非常に致命的だと考えられる。
- 日本の観光地は、インターネット上に英語や外国語で情報公開していないケースが多い。情報がなさ過ぎるあまり、基本的な営業時間や行き方をインターネット上に公開するだけでも集客効果がある状態。それほど外国人は日本の観光情報に飢えている。
飲食店の世界スタンダード化
- 予約システムを始め、飲食店がDX化できていない大きな理由は、システム利用料の支払いに抵抗があるため。有名店であってもシステム料の支払いができないのは、値上げをせずに我慢大会をしてしまう日本企業の体質にも問題があるのではないか。
- 日本食は外国人にも人気な寿司、すき焼き、ラーメンなど、選択肢は多い。ただし多様性はなく、ハラルやアレルギー対応がまだ足りていない。
- 食文化を国際化する必要はないが、DX化や多様性に関しては、世界スタンダードに合わせる必要が迫っている。
DX化で脱ミシュランを
- 外国人が英語や外国語で得られる日本の飲食店情報は非常に少ないのが現状。そのためミシュランが重要な情報源になっている。ミシュラン掲載店は外国人から過大評価され、掲載されていないと過小評価されてしまっている実情がある。
- ミシュラン掲載店の多くもオンライン予約に対応していないため、ホテル側は宿泊者の電話予約代行を行っており、相当な手間がかかってしまっている。また、電話予約した外国人観光客の無断キャンセルは多くのレストランが直面している課題でもある。これらはDX化が進み、予約システムやミシュランに頼らない集客が実現すれば解消される問題であろう。
- DX化のための予算は自治体が確保しているものの、活用しきれていない。自治体のWebサイトに地域の飲食店情報を掲載する、といった基本的なことも行っていない自治体が多い。
ライドシェアはタクシー業界への影響なく始められる
- 交通の問題が解決することで、外国人はもっとその地域の魅力を知り、日本を好きになる。
- 地方の交通面の課題を解決するため、日本も世界のスタンダードである民泊やライドシェアを取り入れるべき。
- タクシー業界と顧客の取り合いにならない工夫もできるはずである。例えば、無人駅周辺ではタクシー会社側には運営するメリットがない。そういった地域でのライドシェアであればタクシー業界に直接の影響もなく、すぐにでも開始できるのではないか。
- 最寄り駅やバス停から歩いて行けない宿泊施設同士が、車を出しあって顧客を送迎することもある種のライドシェアと言える。
以上が、登壇者の話を聞いて特に印象的だったトピックです。長年日本でインバウンドについて取り組んできた星野氏や、JR東日本の高橋氏の意見は非常にリアルで、障壁がある中でも出来ることから始めることの大切さを感じました。
インバウンドマーケティングに携わる者として、引き続き日本のインバウンド業界を盛り上げるべく取り組んでいきたいと思いました。
※10/27追記:講演の内容が公開されております!ご興味がお有りの方はぜひ。